【アカイツバサ】
ある日 壬生がこう言った
「龍麻のその翼、綺麗だね」
俺はその言葉を不思議に思いながら聞いていた
「翼なんかないよ?」
俺は首をかしげながらそう言った
「あるじゃないか、綺麗な翼が」
そう言って壬生は突然ものすごい力で俺の肩をがしっと掴んだ
ギリギリと掴まれる肩に痛みが走りぬけた
「ちょ…い、痛い…ッ」
俺は慌てて抵抗した
だけど 今の壬生は壬生じゃなかった
目の色もまともじゃなかったし、力も壬生のものじゃなかった
そう、まるで人間じゃないかのような…
「壬生…痛い…や、やめて…ッ」
俺の瞳が恐怖で滲んだ
目の前にいるのは誰だろう?一体誰なんだろう?
本物の壬生は何処へ行ったんだろう
シャァァァァァァァァァァァァァァッ
突然 絹を裂くような音が耳を劈いた
「ッ」
俺の白い肩が剥き出しになる
そして壬生の姿をしたものは俺を組み敷いて背中に爪を立てた
「や、やめろ!!オイ!!」
背中がジリジリと痛み出した
壬生の姿をしたものの爪が俺の背中に食い込む
「君には見えないのかな…この綺麗な翼が…」
突然 背中に鋭い痛みが走った
壬生の姿をしたものが俺の背中の肉を抉り取った…
「――――――――――――――――――――――――――ッ!!」
俺は声にならない声で叫んだ
恐怖と痛みで顔が引きつる
「痛い…痛いッ!!」
赤い血が地面に赤い花を咲かせた
痛みに地面を転げまわる俺を冷たい表情で見下ろしながら
壬生の姿をしたものは薄笑みを浮かべながらこう言った
「ほら、綺麗だね。赤い翼」
俺の背中から抉り取った肉片を両手に握り締めて
壬生の姿をしたものは満足げに俺を見下ろしている
そしてあまりの痛みに俺の意識は遠ざかっていく
遠ざかる意識の中 俺は最後に壬生の声を聞いた
これ以上ないくらいに愛しそうで優しい彼の声を
「キレイダネ、タツマ」
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